コンセプトは「地上で読む機内誌」。誌面を飾る世界各地の美しいビジュアルとテキストは、読者を架空の「想像旅行」へと誘うだけでなく、 その地へ「実際に行ってみたい」と思わせる、リアル・トラベルの入り口をも提供します。

Editor’s Note #15 オーストラリア

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 #15 オーストラリア / Text:ルーカス ビービー(本誌P.10より)

[オーストラリアの「ビッグ&ブルー」を求めて]

今号のPAPER SKYのために、僕たちはドライヴに出かけた。それは「地球の裏側の国、オーストラリアのオーシャン・ドライブだった、海を探し求め、その海がどのようにオーストラリアのライフスタイルを形成しているかを知りたかった。ブリスベンから南へメルボルンまで海沿いのハイウェイを走り、強烈なブルーの空とボンダイブルーの海を背景に、僕たちはすっかり青一色に囲まれていた。「ビッグでブルーなオーストラリア」、今回のロード・トリップのムードを一番うまく表現するとしたら、そんなふうに言えるかもしれない。そして、古い街や新しい街、大きな街や小さな街を通り過ぎながら、車のウィンドウ越しに、立ち寄ったガソリンスタンドに、そしてもちろんこの海岸沿いのドライヴで出会った人や場所のすべてに、この国を発見したのだ。そんなオーストラリアで見つけたとっておきの秘密を、ちょっとだけ紹介しよう。

「レッド・ロック・チリ・チップス」特にライム&ブラックペッパー味、「マウント・フランクリン」ミネラル・ウォーター、いつどんな時も5㎏のサーモンを釣らせてくれるフレンドリーなフィッシャーマン、天の川の全景をも見渡せる素晴らしい星空、圧倒されるほどたくさんある美しいビーチ、とてもクリーミーで甘いカフェラテ、膨大な種類のユーカリの木、腰にセクシーなタトゥーを入れたバーの女性たち、ナット・ヤング、ボブ・マクタヴィッシュ、シェーン・ホラン、前方にパトカーがいることをパッシングで知らせてくれる対向車、ニューカッスル、シドニー市街を何千人もの人がジョギングしているなんともおかしな光景、驚くほどの数のギリシャ人とギリシャ・フード、政府後援の野外パーティやレイヴ、派手なシャツを着たトラック運転手、まるで鳩のように街灯柱にとまっているペリカン、オーシャン・ヴューが楽しめるレストランの数々(Rae’s, The Bathers’ Pavilion, Stokehouse, The Baths, A La Grecque)、今まで聞いたこともないような言葉を喋る鳥、ゴーカートのコースのようなフリーウェイ、午前11時前に10のうち8のカフェでかかっているトランス・ミュージック、オーストラリアの鳥たちよりもカラフルな制服の女子高生、80%がスポーツ欄で占められている新聞各紙、サッカー場での子どもたちとカンガルーの共存サメよけネット、世界的に有名な建築家ミック・ピアースと彼の新しいプロジェクト「CH-2 Green Building」(www.mekbourne.vic.gov.au)、ポート・フィリップ湾を横断する40分間のフェリーの旅、「OK」という言葉の代わりにみんながいつも親指を立てているように見えること、道路標識–特にカンガルーとウォンバットのサイン、TV放映されるクリケット試合、寒い冬だけれども暖かい服を気になれず、短パン半袖で歩き回っている地元の男性、「バーガー・キング」が「ハングリー・ジャックス」と呼ばれていること、そして・・・・・・星の数ほどある芝生のボウリング場。

たった一度しか旅していないのに、一体どうしてオーストラリアで”いちばん”の秘密をこれほどたくさん挙げることができたのか。そう、僕たちはこの旅で、まさに”道”というものにこだわったからなのだ!とりわけ「オーシャン・ロード」。ブリスベンからメルボルンまで、この道を海沿いに南へ2,200㎞以上ドライヴし、3つもの–1)PAPER SKYらしいユニークな場所、2)オーストラリアの伝説のサーファー、3)最高のオーシャン・ヴューが堪能できるレストランを探し求め、その途上にある小さな街んぼすべてで、僕たちは車を停めた。さあ、オーストラリアに行って、エンジンを全開にし、シートベルトをしめて、世界一素晴らしい海岸沿いのドライブに出かけよう!
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Editor’s Note #14 秋田

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 #14 秋田 / Text:ルーカス ビービー(本誌P.10より)

[アキタ・ユタカ]

空にかかる二重の虹に驚いて、じっと見上げていた時、一人の小柄なお年寄りが「こんにちは」と言って握手を求めてきた。「アキタ・ユタカです。初めまして」。その年齢にもかかわらず–たぶん70代前半ぐらいだろう–、彼の眼は少年のような好奇心と無邪気さで輝いていた。真っ赤に紅潮した頬は幸福感とエネルギーに満ち、その口からは、周りを囲む水田や山々の風景と同じくらい幅広く豊かな話が溢れ出る。この魅力的な男性、秋田さんは、母親がその名に託したという、この地にまつわる壮大なすべてのものを体現していた。彼は全身で秋田を表現している人だった。

山菜やブナの木、熊の爪跡やカエルの卵、さまざまな種類の植物を一つ一つ指差しながら僕たちをガイドしてくれた秋田さん。そのとき僕は、とても穏やかな気持ちになっている自分に気づいた。実際これまでの旅の中で僕たちが出会ったこの初夏の秋田ほど平和に満ち溢れた場所はなかった。山であれ湖であれ温泉であれ、僕たちが訪れた全ての場所、口にした食べ物や出会った全ての人々さえものが、温かさのこもったエネルギーを放射していた。

初夏の秋田は「ユタカな」土地だ。エメラルド色の川や激しく流れ落ちる滝、空一面の星にも勝る緑の木陰が僕たちの眼を癒し、地鶏や秋田牛、原産米、日本海の魚、山菜、そして日本一新鮮な白神山地の湧き水から作られた国内随一の酒など、この国で一番おいしい食べ物の数々が僕たちの胃袋を満たしてくれる。

今号の『PAPER SKY』では、秋田周辺を歩く3つの自然散策へ読者の皆さんを招待しよう。僕たちが選んだ最初のコースは八森町の留山散策。この散策では、美しいブナの木にきっと感動できるはず。その気になったら、神秘的で美しい白滝に打たれて願を懸けてみよう。第2のコースは角館。ここの水は空よりも青い。「抱返り渓谷」の絶景は一生忘れることのできない思い出となるだろうし、「回顧(みかえり)の滝」の美しさには心が癒される。散策の後にはちょっと茶屋に立ち寄って、できたての団子をいただこう。それでもまだお腹に余裕があったら、ジャンボ煎餅にトライ。とっても懐かしい味がする。第3のコースは「秋田市植物園」。秋田原産の植物がきちんと分類されているこの植物園は、秋田探検の出発点としてもってこいの場所だ。植物園を訪れたら、秋田名物のすばらしい山菜コレクションも要チェック。それぞれ2-3時間を要するこれらの散策コースは、自分で好きなように歩いてもよし、またはちょっとお金を払ってガイドを頼んで、青々とした森林を覆う山菜や草木についていろいろと教えてもらいながら歩くのもよい。『PAPER SKY』が選んだのは、若き酒蔵の常務(ロックバンド・ズボンズの元マネージャー)、秋田名産の食料品を売るとてもユニークなスーパーの女性副社長、そして民芸品の伝統を守り続ける「イタヤ細工」職人の3人だ。

この3つのお勧めコースのほかにも、自分だけの山菜を探してみたり、じゅんさい農園で小舟に乗って自分だけのじゅんさいを摘んでみたり、僕たちのように自分でどんどん冒険してみよう。

さあハイキング・ブーツの靴紐を締め、リュックサックに「ササマキ」を詰めて、秋田散策の旅へいざ出陣!
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Editor’s Note #13 ポルトガル

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 #13 ポルトガル / Text:ルーカス ビービー(本誌P.10より)

[家のような場所]

僕は成田でルフトハンザの飛行機に搭乗したのだが、そこで出迎えてくれた日本人のスチュワーデスは、チケットの半券を見せた僕に、「アリガトウ」と言葉をかけた。その後、飛行機を乗り換え、成田を発って約20時間後、僕はポルトガルで飛行機を降りた。降り際、ポルトガル人のスチュワーデスは、「オブリガード」とつぶやいた。「アリガトウ、オブリガード」–いずれも、まったく同じ意味の言葉だ。僕は言語学者ではないけれど、500年ほど前に初めて日本に来航したポルトガル人によってその言葉がもたされたのか、またはやってきたポルトガル人が本国へと持ち帰って広まったのか、はたまた単なる偶然か、僕は推測をふくらました。

今号のPAPER SKYは、ポルトへの旅。ポルトとはポルトガルの旧首都だ。日本の土を最初に踏んだヨーロッパ人がやってきた場所でもある。金平糖やパン、襦袢、カステラ、合羽・・・今では一般的なこうした品々も、日本に初めて上陸したポルトガル船によってもたらされたものだ。

僕はいつもまずは食べ物でその国を判断するのだが、ポルトガルはこのテストを見事にクリアした。実はポルトガルは2001年、スローフード大国の第一位に選ばれている。ポルトガルにはとても美味しい黒豚(ポルトガルからの食肉の輸入を認めていない日本では、食べることはできない)があり、最高のイワシがあり、素晴らしいステーキがあり、見事なオリーブオイルがあり、そして極上のワインがある!

ドロウ・バレーへは電車での旅となる。ここはワインの歴史が始まる以前からワインを生産しており、ワイン発祥の地の一つである。1757年には世界で初めてワインの分画区域とされ、その境界に立てられた花崗岩の柱は今なお健在だ。 1996年には世界文化遺産地域にも認定されている。

赤・白のテーブルワインやスパークリング・ワインも生産されているが、ポルトガルの最も有名なワインは非常に独創的だ。ポートワインは、甘くて芳醇なすばらしいワインで、食前食後にぴったりだ。非常に飲みやすいのが、アルコール度数はたいてい19-22%の間という強いワインでもある。

僕たちは気が付くといつも、食前にミニサイズのコロッケ(日本と同名の、同じ料理)をつまみながら、トニックウォーター割りの白のポートワインを飲んでいた。そしてメインにはモツ煮込み(ポルト特有の料理)を食べ、レイト・ボトルド・ヴィンテージ・ポート(LBV)を飲み、さらに塩だけで味付けし、炭焼きした新鮮なイワシを食べていた。

ポルトガル人は日本人同様、素材そのものの新鮮さや風味にこだわっている。そしてパンが主食であるほかのヨーロッパ諸国とは違い、ポルトガルではたいていいつも、米が食卓に並ぶ(オブリガード。ジャパン)。ガイドによれば、ポルトガル人はヨーロッパのどの国よりも、一人当たりの米の消費量が多いそうだ。そしてその米のほとんどが、国産なのだとか。食事は続く。ポルトガルでは食事にかける時間がとても長く、3,4時間は当たり前。チョコレートがけのイチゴとカステラ(日本と同じ味)のデザートとともに供されるのは、大きなグラスに入ったルビー・ポート、といった具合。そして食事が終わったら、大きな赤いソファに腰をかけ、トーニーポートをちびちびやりながらシガーを吸うのだ(特集の”How To”のページでは、ポートワインの種類を詳しく説明しているので、必ず読んで)。

最後に、ポルトガルと日本の間に存在する美食や文化、またその感性にさえ見られる類似性以外にも、ポルトガル人のもつ空気感やパーソナリティには、二つの国をつなげるより深い何か、ハートやソウルからくる何かがあるように思う。人を心からリスペクトし、人に対して興味を持つ、というようなこと。僕がこれまで日本から西洋諸国へ旅した中で、どこか別の惑星に降りたったような感じがしなかったのは、ポルトガルが初めてだ。そこは家のような場所であり、日本のような場所だった。それでは、今回の特集へ「いってらっしゃい!」
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PAPER SKYの編集長ルーカスに、特集の見所や取材の様子をインタ ビュー。取材の合間のこぼれ話やオフショット写真など、ルーカスならではの旅 の視点を伝えます。毎号本誌に掲載されている「Editor's Note」もこちらで読 むことができます。



ルーカス / Lucas

クリエイティブディレクター/編集人

1971年生まれ。トラベル・ライフスタイル誌『PAPER SKY』やキッズ誌『mammoth』、ベビー誌『baby mammoth』を発行しながら、プロデュース/編集/制作プロダクションとしてアイデアに溢れたクリエイティブ活動を行う(有)ニーハイメディア・ジャパンの代表取締役兼、総合プロデューサー。これまで『metro min.』(スターツ出版)や『tokion』、『planted』(毎日新聞社)など多くの雑誌創刊に編集長やクリエイティブディレクターとして深く関わってきた雑誌づくりのプロ。時代を先取りするセンスと人脈は雑誌だけでなく、旅の書店「BOOK246」や子供のためのセレクトショップ「3 Feet High」のプロデュース、さらにはSHIPSとのコラボレーション・ブランド「ships mammoth」など、多方面のクリエイティブにも生かされている。www.khmj.com
Editor's notes
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