コンセプトは「地上で読む機内誌」。誌面を飾る世界各地の美しいビジュアルとテキストは、読者を架空の「想像旅行」へと誘うだけでなく、 その地へ「実際に行ってみたい」と思わせる、リアル・トラベルの入り口をも提供します。

Editor’s Note #19 ロンドン

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 #19 ロンドン / Text:ルーカス ビービー(本誌P.10より)

[草上のロンドン]

ロンドンといえば、僕たちのほとんどはセックス・ピストルズ、2階建てバス、古城、そしてはるか遠い遠い昔のことばのように聞こえる英語を話す人々を思い浮かべるだろう。でも僕たちPAPER SKYがやるべきなのは、いろいろな国や都市、街や人々を、少しだけ違った視点から紹介すること。だから僕たちは、もう一度ロンドンを見つめなおしてみた。するとワオ!ここには魅力的な公園がなんてたくさんあることか。すばらしい芝生、パーフェクトに美しい綿のような緑の芝生…ほら、出た。ロンドンの真髄を捉えると、こんなふうに、ロンドンっ子が喋る英語の独特なスタイルにもつれてしまうのだ。

僕たちはブレーンストーミングを続け、芝生をテーマにしてロンドンのリサーチをおこなった。すると、この場所の30%以上が広大な緑の大地に覆われているということ、そして、同じくらいの面積をもつ世界のどんな年寄りも、ここには数多くの公園があるということがわかった。つまり、ロンドンは原っぱの街ということだ。じゃあこの原っぱで、ロンドンっ子たちはなにをしているのか? 彼らはそこでスポーツをしている、しかもそのほとんどは、彼ら自身が生みだしたものなのだ。フットボール、ゴルフ、テニス…そう、これら偉大なスポーツは、すべてこの地から生まれたのだ。

今号のPAPER SKYでは、英国人と同じように、日本でも親しまれている競技にフォーカスし、読者の皆さんが次にロンドンを旅したときに、プレーしたり観戦したりすることのできる場所を紹介している。僕たちはロンドンにあるイングランド・プレミアリーグのスタジアムをすべて訪れ、ウィンブルドンにひざまずき、そのベルベットのような芝生を感じた。またロンドンの中心街から列車でほんの数分のところにある世界でもっとも有名なゴルフコースで、ちょっとしたパッティングを楽しんだ。さあそれでは、刈りとったばかりの芝生の香りを吸いこみながら、次のロンドン旅行に向けてティーアップ(準備)するとしよう。
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Editor’s Note #18 秋葉原

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 #18 秋葉原 / Text:ルーカス ビービー(本誌P.10より)

[アキハバラ・ドリーミング ~夢見る秋葉原]

なぜ秋葉原なのか? それは、この街が夢見る人たちの地であり、夢がはじまる場所だからである。約400年前、そこには眼をキラキラさせたサムライたちが、一人前の兵士となるべく懸命に訓練する姿があった。時を経て、ここは「火の町」となった。そして秋には美しい紅葉で彩られた「秋葉」は、火の神様と深い関係となった。1880年代のはじめ、秋葉原は新しい火、「電気」を灯した。国内の電力が公共となり、電線やチューブやカッターを売る小さな店が町一帯に軒を連ねたのである。

歴史を通じて、秋葉原はつねに、変わりゆく文化の最前線に位置づけられるファッションリーダーとしての地位を守りつづけてきた。アキバは流行の発信地。その証拠に、1886年に「伊勢丹」第1号店があった場所がいまでも残っている。アキバから生まれた次なるトレンドは、野菜と一緒に売られていたラジオとそのパーツだった。ラジオ放送が開始され、ラジオとパーツの需要が急速に伸びはじめた1925年には、カボチャとニンジンとラジオをいっぺんに買うことができたのだ。

秋葉原は現在、新しい流行や製品や文化が、国内のみならず海外にも広く普及している場所として、さまざまな夢とともにふたたび爆発的な拡大を見せている。今号のPAPER SKYをバイリンガルで発行することにしたのも、それが理由だ。このガイドは、秋葉原の魅力的な過去と現在、そしてそれほど遠くない未来を紹介する。僕たちは秋葉原の「オシャレ」な側面だけでなく「オタク文化」もカバーしたいと思った。それにもちろん、未来に生きるこの街のどこに行けば、最高の製品、最高のお買い得品、最高の食べ物を手に入れられるかといった、より実践的な側面も網羅しようと努力した。そこで最新式ロボット「Lego㌃ Mindstorms㌃ NXT」をこの街に送り、案内役として活躍してもらうことにした。彼はみんなのどんなニーズにも、完璧に応えてくれる。というわけで、アキバですばらしい一日を! イッテラッシャイ。
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Editor’s Note #17 ギリシア

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 #17 ギリシア / Text:ルーカス ビービー(本誌P.10より)

[クレイジーで愛嬌のある国、ギリシアのA-Z]

ギリシアについて、きみはなにを知ってる?–これは僕が旅に出る前、ありとあらゆる人たちに訊きまわった質問だ。答えはいつもたいがい、沈黙だった。ときにはこんなふうに答える人もいた、「猫」「廃墟」「村上春樹」…。でも沈黙の後にはたいてい、「いつか行ってみたい」という言葉が続いた。

そこで今号のPAPER SKYでは、「ギリシア」を定義することをミッションとした、真っ青な海と真っ白な建物といういかにもな特徴以外のイメージを、この国に与えるために。まずは、この場を借りて僕が大好きなことや僕が気づいたいくつかのことを、読者の皆さんと一緒に考えてみたい。

光:光の彩度は、まぎれもなくギリシアを他と分かつ特徴だ。ギリシアの昼間は、まるで閃光の下を歩きまわっているような気分にさせる。もしもステレオのボリューム調節のように光が加減されているのなら、ギリシアのそれはいつでも目盛りが「MAX」に合わせられているんだろう。光がもつ信じられないくらいの力、それはあらゆるもののどんな細部までをも、すべて顕わにしてしまう。ほとんどの国では、人は人であり、自然は単純に美しい。ギリシアでは、人々は彫刻となり、自然はきらきらと輝きながら踊っている。光がすべての事物のすべてのディテールを吸収し、そこへ浸透し、それらを少しづつ吸い上げて、ぐつぐつと煮え返らせているのだ。

水:ギリシア人は水を愛す。それは日本でいうお茶のような感覚だ。カフェに座ると、軽食と一緒にかならずグラス一杯の水がついてくる。スーパーマーケットに行けば、数えきれないほどたくさんのブランドの水が売られている。この水消費の獲得をめぐる競争はたしかにガへ敷く、これがこの国のボトル・ウォーターの品質を高めている。僕のお気に入りのブランドは「IAOH」、ガラスのボトル入りで売られている。作家ヘンリー・ミラーは、初めてギリシアに訪れた日を回顧してこう書いている。「水が入っていたボトル…どこへ行っても、私はこの水のボトルと出会った。それが私につきまとって離れなくなった。以来私は、水をなにか新しいもの、生きるために不可欠な、新しい要素として考えるようになった」。

食:「グリーク・コーヒー」は、コーヒー豆の粉を直接カップに入れて作るコーヒーで、実際にはトルコのコーヒーとよく似ている。そして僕にとってはとても嬉しいことに、ギリシア料理のほとんどが中東料理の寄せ集めなのだ。中東諸国と同じように、ラムとオリーヴをベースに料理をつくる伝統がギリシアにはある。ほかに中東料理の基本といえるのには、米、イチジク、ヨーグルト、全粒粉のパン、シシケバブがあり、そしていろいろなスパイスであえたライスとハーブを野菜に詰めたり、レタスの葉に包んで食べたりする調理法がある。ギリシア人は中世の世代、ギリシア正教の修道院でギリシア料理を極めた、食事を準備する間、料理担当の修道士たちは、背の高い縁なしの黒い修道士帽をそのまま白色にしたようなものをかぶっていた。それがいまや、巨匠といわれる世界中のシェフたちの伝統的スタイルとなっている。

ギリシアを定義しようと努力を重ねているうちに、僕たちはアルファベットというものに出くわした(どうであろうとギリシアは、アルファベットを生んだ偉大なる母たちのひとりなのだ)。アルファベットの文字はどれもみな、僕たちがまさにギリシアだと感じるようななにかがあるように思えた。今号を全部読み終えるまでには、ギリシアに対する見かたがちょっとだけ変わるだろう。そして次の海外旅行には、この愛すべき場所、でも少しねじまがった、クレイジーで愛嬌のある美しい場所に行ってみたくなるに違いない。
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Editor’s Note #16 島根

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 #16 島根 / Text:ルーカス ビービー(本誌P.10より)

[Shimane ni shitto shita!]

島根、そこは歴史の深さと心の余裕を感じる場所だ。古代から続く長い時間の連なりの中で、”今”に生きる島根人たち、そのうらやましいほど贅沢な暮らしぶりは、数年前にたった一度だけそこを訪れたことのある僕の脳裏に焼きついていた。いつかじっくり島根を堪能したい・・・そんな僕の願いが叶って、再び島根に赴くことになった。

そして僕は島根に嫉妬した。

今回の旅で、僕は新たに島根の魅力を発見した。聖なる場所、歴史的建造物、文化・風習、美しい景色、おいしい食べ物、美人、ゆとりのある人々の心・・・この土地が長い年月をかけて育んできたすばらしい遺産の数々がそこには存在する。他の場所では見られない独特な魅力は、挙げ出したらきりがない。そんな島根を僕らは”時”をキーワードにレポートしようと考えた。古代、近世・近代、現代、そして未来と、時代ごとに変わる島根の顔を”時が重なる場所”として捉えてみようというわけだ。

まずは、日本人なら誰もが知る出雲大社を中心とした古代文化の取材をした。多くの神話を生み出し、今でも聖なるエネルギーが溢れる出雲大社。ちょうど神在月(島根以外の地域では神無月)で、全国の神々が出雲大社に集まっているとのこと。その期間は神様たちが出雲に滞在し、年に一度の大会議が開かれているのだそうだ。目には見えないけれど、確かにその賑わいは感じられた。幼少期によく大社を訪れたという、建築家で島根県出身の高松伸さん(56ページで紹介)は、子どもながらにその建造物のもつエネルギーに圧倒されたという。また”むすび”のパワーをもつ神々のはたらきがあるようで、結婚はもちろんビジネスや政治の場においても、良縁を願う人々が訪れる場所でもある。

近世から近代にかけて、文化の中心は松江に移行する、松江の近世を築いたファッションリーダー松平不昧公は、茶道をはじめ暮らし全般に芸術的なエッセンスを加え、一見控えめだがしっかりとした主張のある彼なりのスタイルを確立させた。そのスタイルは今でも松江のあちこちで見かけられる。僕らは彼の茶室を眺めながら、彼の好物だったといわれるどことなく品のある和菓子をいただいた。

近代になると、またまた一風変わった人物が松江に登場する。彼の名はラフカディオ・ハーン、小泉八雲である。日本人女性と結婚し、松江と日本を愛した八雲は、肌で感じた日本を彼なりの解釈で外国に伝えるべく、さまざまな文章を残した。八雲が暮らした家で彼の生きた時代を連想し、今、彼がここを訪れたら、どんなことを感じるのだろうかと思いをめぐらせた。八雲が好んだ白小豆の羊羹を食べながら、僕はその時代にこの町を訪れた風変わりな外国人をうらやましく思ったりもした。

そして今回、僕たちは現在の島根を歩いた。長い島根の歴史から思えば、ほんの一瞬である。しかしこうして時の重なりを感じる旅をして、僕はあることに気がついた。”今”とは古代、近世・近代、現代、そして未来までもが凝縮された時なのだということを。歴史的建造物と現代建築の狭間で、僕らは過去から未来へ、そして未来から現在へと自在にタイムスリップをしていたのだ。数日間の滞在中、僕らは過去にも未来にもいた、そう、僕らは時のなかを歩いていたのだ。
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PAPER SKYの編集長ルーカスに、特集の見所や取材の様子をインタ ビュー。取材の合間のこぼれ話やオフショット写真など、ルーカスならではの旅 の視点を伝えます。毎号本誌に掲載されている「Editor's Note」もこちらで読 むことができます。



ルーカス / Lucas

クリエイティブディレクター/編集人

1971年生まれ。トラベル・ライフスタイル誌『PAPER SKY』やキッズ誌『mammoth』、ベビー誌『baby mammoth』を発行しながら、プロデュース/編集/制作プロダクションとしてアイデアに溢れたクリエイティブ活動を行う(有)ニーハイメディア・ジャパンの代表取締役兼、総合プロデューサー。これまで『metro min.』(スターツ出版)や『tokion』、『planted』(毎日新聞社)など多くの雑誌創刊に編集長やクリエイティブディレクターとして深く関わってきた雑誌づくりのプロ。時代を先取りするセンスと人脈は雑誌だけでなく、旅の書店「BOOK246」や子供のためのセレクトショップ「3 Feet High」のプロデュース、さらにはSHIPSとのコラボレーション・ブランド「ships mammoth」など、多方面のクリエイティブにも生かされている。www.khmj.com
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