コンセプトは「地上で読む機内誌」。誌面を飾る世界各地の美しいビジュアルとテキストは、読者を架空の「想像旅行」へと誘うだけでなく、 その地へ「実際に行ってみたい」と思わせる、リアル・トラベルの入り口をも提供します。
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Editor’s Note #26 モロッコ

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 #26 モロッコ/ Text:ルーカス(本誌P.6より)

[インスピレーションの宝庫に迷いこんで]

およそ100年にわたって、アフリカ人、ベルベル人、ユダヤ人、アラブ人、ヨーロッパ人が互いに調和しながら暮らしてきた国、モロッコ。豊かな文化をもつその国には、わらや土、木や石といった材料でみごとな作品を生みだす優秀な職人がいる。そこは砂漠や海、すばらしい建築物や庭園といった美しい景観に囲まれている。そして、満開の「砂の薔薇」とラクダのくしゃみ、ポット一杯のフレッシュなミントティーが明滅する感覚に光を与え、新鮮なアイデアと考えをインスピレーション豊かに呼び起こす。
PAPER SKYがこの小さなアフリカの国を今号の目的地に選んだのも、そのインスピレーションの力に導かれたからだ。そして、先日他界したイヴ・サンローランから、ロック・ミュージックを永遠に変えたジミ・ヘンドリクスにいたるまで、世界の偉大なアーティストの多くに影響を与えてきたのも、このモロッコのインスピレーションなのだ。今号のPAPER SKYでは、数年前にモロッコのすばらしいライフスタイルを発見して以来、この国の虜になっている有元くるみをスペシャルゲストに迎えた。
モロッコへの旅の途上、僕は蒸したラム肉を食べて人生最悪の胃けいれんに見舞われた。エッサウィラという紺碧の海岸の町をなんとか自力で歩いて、賑やかなマラケシュの病院に数時間だけ入院した。少し回復してから、僕たちは13時間かけて、マラケシュの町から世界で最も危険といわれる道のひとつを通ってアトラス山脈を越え、小さな砂漠の町メルズーガまで車を走らせた。この町に入ってからはラクダに乗って砂漠を渡り、オアシスにテントを張って、そしてみごとなアフリカのグナワ音楽に心を委ねたのだった。今号のPAPER SKYが読者の皆さんの感覚を自由に解き放ち、モロッコへの旅のきっかけになることを願って- 。
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Editor’s Note #25 カリフォルニア

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 #25 カリフォルニア/ Text:ルーカス ビービー(本誌P.6より)

[現代文化のノーザンライツ - 北カリフォルニア]


僕はバルチモアに生まれた。当時20歳だった母は、誰もが認めるウッドストック・ヒッピー。僕が3歳のころに家族でカリフォルニアへ渡り、最終的にビートニクとヒッピーとサーファーのメッカ、西海岸に移り住んだ。

音楽、文学、食べ物、アート、そしてスポーツにいたるまで、現代文化の多くはビートとヒッピーとサーファーの影響をおおいに受けてきた。そしてこのすべてのムーヴメントに共通しているのが、北カリフォルニアの街々に深いルーツをもっているということ。ビートとヒッピーとサーファーがどれほど多くの影響を僕たちに及ぼしてきたか、そしていかに僕たちのカルチャーを感化しつづけているか、それを読者の皆さんに伝えるため、PAPER SKYはこの街へ旅立った。これらのムーヴメントがその基礎を築き、今もたしかに存在して人々を刺激している、数々の場所を垣間見るために。

今回の旅は、サンフランシスコのベジタリアン・レストラン「Greens」のブレックファストに始まる。ここは現代の「オーガニックフード」の元祖といっても過言ではない。そしてビートのメッカ「City Light Books」までぶらりと散歩。さらに地下鉄や車にちょっと乗ってバークレーまで足をのばし、ダスティン・ホフマンの映画『卒業』に登場する伝説的な本屋「Moe’s」に立ち寄る。そこから僕たちが向かったのが、じわじわと細胞増殖のように成長し、今やサーフィンとスケート・ムーヴメントのメッカともなったサンタ・クルーズ。ここにはアメリカでもっとも進んだ知的能力をもつ大学のひとつ、カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校(カリフォルニアンたちはUCSCと呼んでいる)がある。その少し南にあるのがビック・サーと呼ばれる場所。かつてはここに、ビートとヒッピーとサーファーが、おいしい空気と世界有数の美しい自然を求めてやってきていた。このあたりは、スピリチュアルでオルタナティヴなライフスタイルを生みだした「エサレン研究所」の本拠地であり、ビートに大きな影響を与えた作家ヘンリー・ミラーの故郷でもあり、また「マーヴェリックス」と呼ばれるビッグウェイブと、この大波を初めて制覇したという伝説のサーファー、ジェフ・クラークに会いに、世界中からサーファーが集まるハーフムーンベイにもほど近い。そして、このオルタナティヴ・ムーヴメントの旅物語の締めくくりとして、現代のムーヴメントに欠かせないのが、フランシス・フォード・コッポラの驚くほどおいしいワイン「ルビコン」を生んだナパのワイナリーRubicon Estate」だ。

さあ、これで十分。手短かに言えば、今号のPAPER SKYを読んで、ビートニクスとヒッピーとサーファーのすべてを学んだら、あとはもう「トリップ」するだけ、ということ!

Editor’s Note #24 タヒチ

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 #24 タヒチ/ Text:ルーカス ビービー(本誌P.8より)

[花の島]

タヒチの人々にとってティアレは、日本人にとってのお米のようなもの。つまり文化の象徴ともいうべき存在。タヒチの国花として美しい星形のティアレは、空港に降り立った観光客全員に手渡される。一度匂いをかいだだけで、もう一生タヒチのことを忘れられなくなるほどの香りだ。タヒチに住む人々は、男性も女性もこの花を身に着けている。男性はつぼみを耳の後ろに、女性はきれいに花開いたものを。ティアレの花はモノイオイルをつくるのにも使われる。このオイルをタヒチの人々は生まれてから死ぬまで、薬や美容のために毎日のように肌に塗っているという。

そう、ここでは毎日が花々に癒されているのだ。タヒチの人々は、花と植物なしでは (more…)

Editor’s Note #23 京都 

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 #23 京都 / Text:ルーカス ビービー(本誌P.8より)

[京都を食べたら甘かった!]

京都の秋はなんともいえず美しい。豪華なオレンジと黄と赤に彩られた木々のタペストリーと、歴史を感じさせる古い寺が隣り合わせになったこの町では、過去と未来という時が刻む鼓動を感じ取ることができる。でも今回は、京都のちょっとした秘密をこっそりと教えてあげよう——京都は夏もまたすばらしいのだ。そんなの信じられないと誰もが思うかもしれないが、それは、観光客が引いてしまうほど京都の夏の暑さは厳しいという噂を、イヤというほど聞かされてきたからにちがいない。 おかげで夏に京都を訪れる人は、そんなナンセンスな噂に耳を貸そうともしない、数少ない「勇気ある」物好きだけということになってしまった。もし暑さこそ避けたい要素なのだとしたら、夏を過ごしたくないと思う場所は京都ではなく東京だろう。風が通らないコンクリートのビル、車の排気ガス、冷たい空気を中に入れ、ムンムンした空気を外に吐き出すエアコン……これらが三つ巴になって首都全体を覆っている。それは僕たち東京人を、電子レンジでチンしたバターのようにドロドロに溶かしてしまう。

一方で、死ぬほど夏が暑いとされる京都は、その中心を美しい川が流れ、芸妓さんの扇子からは涼しい風が漂い、バスでちょっと移動しただけで冷たく新鮮な空気の吸える山々がたくさんある。でもたぶん、どんなに暑かろうとそこへ行く価値があると感じさせてくれる最大の魅力は、この町を自分のものにできる夏の数ヶ月間に観光客がとても少ないということだろう。つまり、おいしい京菓子を独り占めできるのだ。

今号のPAPER SKYでは、京都の町のいたるところで見かける、3世代〜23世代にわたって伝統的な和菓子を作り続けている21の和菓子メーカーを追った。僕たちの目標は、お菓子を通じて京都(日本のいわゆる「国宝」の20%がある町)の歴史と文化の全貌をとらえることだった。たしかに「スニッカーズ」のチョコレートバーでアメリカを要約しようとすれば、胸やけするか、さもなければシュガー・ラッシュ(砂糖中毒)でハイになるだけだろう。ところがありがたいことに、和菓子はもっともっと多くのものを提供してくれるのだ。この数世紀にわたる技術を受け継ぐ職人たちは、和菓子作りは外観、味、手ざわり、におい、音という「五感の芸術」への精神的・美学的没入を意味するということを僕たちに教えてくれる。さあ、口を開けて、京都をちょっとかじってみよう!
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